2013年11月25日月曜日

うたらばブログパーツ 『目』

電線の束を目で追うこの街の頸動脈の位置をさがして

ドナルドの視線を追えば斜交いにカーネルがいてただならぬ夜


どちらも昔つくったもの。

「電線の束」という言葉について、
あまり自分が使いそうにない表現なのに
この歌をつくるときにするりと出てきたことを不思議に思っていたけど、
最近この曲を久しぶりに聴いていて、同じ言葉が使われていたのを知って納得した。

中村一義/魂の本 歌詞

「電線の束、今日の赤、痛い状態は直感で。」

描写内容もちょっと似ているような。

もしレコードだったら擦り切れるほど聴いていたような音楽の言葉は、
きっと無意識のレベルに刷り込まれていて、
ことあるごとに御守りのように作用しているんだと思う。


2013年11月20日水曜日

あてにならない

キャンペーンにつき無数のおじさんが生後初めてティッシュを配る

肉眼で見えない画素のモニターで見る虐殺のフォト・ドキュメント

《スタッフはトイレ中です。3分で戻ります》 ラミネートPOPに

「あした結婚して、あさって離婚しよう」AVのプロローグ部分で

どこまでが僕の命だ?ハイウェイであてにならない速度感覚

おどろきの効果に驚いています あくまでも故人の感想です

インターチェンジ

生き延びるために聴いてる音楽が自分で死んだひとのばかりだ

銃口の闇に焦がれて極東のENEOSで引く給油トリガー

運転に支障は無くて何年も放置している心の異音

違反速度で逃げたってどこまでも追いかけてくるこの脳みそめ

アクセルを踏み込みなおす降り口を逃した先に夕陽が見えて

渋滞のニュース聞きつつその距離に連なりを成す命を思う

ジャンクションの弧線が光る ささやかな意志の前途を讃えるように


『NHK短歌』2013年11月号「ジセダイタンカ」への寄稿作品
3首目は安福望さんのブログ「食器と食パンとペン」で絵をつけてもらった
→ 水面と眠り

2013年11月7日木曜日

なれないわけ

ビル街をきらきら走る園バスはサファリパークをゆくようにして

スーパーな感じに欠けるスーパーの青果売り場のあまおうに蠅

グルコサミンの軟骨パワーが足りすぎてルー・リードにはなれないわけだ

「ワンちゃん用お線香立て」に天使の輪つけたチワワがそれを使う絵

カラーボックスかかえてかえる射精後のカルマのような夕闇のなか

2013年11月3日日曜日

今日活字になった歌

おばあさんの手押し車を先頭に3メートルの鳩の渋滞
日経歌壇(11月3日) 穂村 弘 選
今回は選評は無し。
敬愛する鈴木晴香さんと隣り合わせで嬉しかった。

嫉妬してください例えばこの雨が君に降らない雨であること /鈴木晴香


同じく敬愛する橘高なつめさんの歌も載っていた。



陽を翳すきみの右手がおもむろに作るキツネは鳴き声も無く /橘高なつめ
(穂村さんの評)
当然なはずの「鳴き声も無く」に不思議な情感が宿った。
なつめさんの歌はいつも重層的で、視覚以外の感覚に訴えてくる力が強い。
漢字とひらがなの表記のバランスも僕の好みで、すっかりファンになっている。
いつか橘高なつめ論を書きたい。
風の便りによると、東洋一の大人かわいい女子らしい。

なつめさんの歌にも晴香さんの歌にも、「君」「きみ」が出てくるのに、
僕の歌に出てくるのはおばあさんと大量の鳩だけ。
「君」が出てこない歌 のときと同じで、また脳内で坂井泉水が歌い続けている。


一番凄かったのは次の歌。

わたしが、と思わず胸にあてた手がピンマイク通し爆音となる /鈴木美紀子
(穂村さんの評)
「ピンマイク」ということは多くの他者に見られている状況だろう。思わぬ「爆音」によって、「わたし」が生の特異点であることが露わになった。

今日はNHKで名前を読まれて、日経で名前が活字になった。

何かちょっとした事件の容疑者にでもならない限り実現しないことで、
短歌をやっていて良かったと思った。ような気がした。

今日電波に乗った歌

あまびこの自動音声に導かれしんと済みゆく生前予約

NHK短歌(2013年11月3日放送) 「声」小島ゆかり選
(小島さんの選評)
これは「あまびこの」というのが「音」にかかる枕詞なんですね。本当でしたら「あまびこの音」っていうふうにいきたいんですけども、こういうちょっと変則的な形もたまにありますので、「自動音声」の「音」にかけていったんですね。「自動音声」とか「生前予約」とか大変現代的な熟語とともに「あまびこの」という古代的な枕詞が活きている、独創的な「声」の題詠、「音」の作品だと思います。

最近、仕事でテープ起こしする機会が多いから、ついつい選評を文字に起こしてしまった。

番組HPはこちら。

入選報告の電話が掛かってきて例のごとく自歌解説を求められ、
ぼんやりとしたコメントを返して電話を切ろうとしたとき、

「あの、岡野さんは短歌男子の岡野さんでいらっしゃいますか?」

と、電話口の担当女性の方にたずねられた。

咄嗟に聞かれたので、
一瞬、一般的な意味合いで「短歌をやっている男子ですか?」と聞かれていると思いつつ
「ああ、まあ、はい。短歌好きです。」と応えると、

「あたし、拝見しましたっ。『短歌男子』っ。素敵ですよねえ。」
「岡野さんビシッ!と決めてらしてっ。ネクタイきゅっとされてっ。」
「小島先生にもその旨お伝えしておきますっ。」

と、まくしたてられてどぎまぎした。

「その旨」がどんな旨だったのかは分からないけど、
一年半くらい前に入選したときに一席になれなかったのが悔しかったので、
今回そうなれたのは良かった。